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kobo端末用EPUBコンバーター、calibreプラグインとkepubifyを試す

 御存じのように楽天koboの電子ペーパー式専用端末で利用するEPUB3ファイルは、拡張子を.kepub.epubにする必要があります。それだけならファイル名を変えればいいだけの話なのですが、加えて中身をIDを振ったspanタグなどで区切らないと、読んでいた位置の保存やしおり、マーカーや書き込み、全文検索ができないというやっかいな仕様になっています。

 弊舎のkobo端末用ファイルでも、一応このIDタグ付けをやっていますが、手作業ですので段落単位などの大まかなタグ付けがやっと。それでは読書位置やしおりはだいたい残っても、マーカーや検索が機能しないのが現状です。それでいてなかなか手間がかかりますので、そろそろ真面目にkobo端末用のEPUBコンバーターを探してみるべきかもしれません。

 というわけでその候補に上がったのが、マルチフォーマットの電子書籍管理ソフトcalibreのkobo端末用プラグインと、kepubifyというソフト。両ソフトをさっそく試してみます。

 まず、calibre。ソフト本体をインストールした後、設定からプラグインを導入します。kobo端末用にEPUBを変換できるプラグインには、「KoboTouchExtended」と「KEPUB Output」の2種類がありますが、前者はパソコンにUSB接続したkobo端末にEPUB本を送信する際に変換するという方式。しかし、欲しいのは読書位置やしおりが残る必要のある本文部分のファイルだけで、目次ファイルや凡例、奥付などのページはプレーンなEPUBのままでいいので、変換されたEPUBから本文部分だけを取り出して使うつもりです。そこでkobo用EPUBを書き出す方式の、KEPUB Outoputプラグインを利用します。

 操作は比較的簡単です。calibreで[設定]→[プラグイン]→[新しいプラグインを取得]と進んで、「KEPUB Output」プラグインをインストールした後、読み込んだEPUB本を選択して、[本を変換]をクリック。[出力フォーマット]をKEPUBにして変換。変換されたファイルは、ライブラリで本を選び、右の欄の[パス:クリックして開く]をクリックすれば、パソコン内の保存フォルダーが開いて確認できます。

 kepubifyでの変換はさらに簡単です。ダウンロードした無圧縮のkepubify.exeファイルにEPUBファイルをドロップすると、たちまち同じフォルダー内に、ファイル名に.kepubが付加されたEPUBファイルが現れます。

 次に、両ソフトのKEPUB変換を比べてみると、IDタグ付けはどちらも既存のタグを区切りとしてやっている様子。そのため、総ルビの鏡花のテキストなどは膨大なIDが振られることになります。ご丁寧にルビにもIDが振られてきます。しかし、<P>タグのみの文章では、当然段落単位のIDとなります。

 IDタグ付け以外にも、両ソフトはEPUBに手を加えているのでしょうか。kepubifyは、xhtmlファイル以外には何等変更を加えていない様子。対してcalibreは、スタイルシートにも大幅に改変を加えているのが大きな違いです。そのため、calibreが書き出したxhtmlファイルには、スタイルシートの指定や多くのclass指定が追加されているようです。これは、コンバーターが書き出した.kepub.epubファイルからxhtmlファイルのみを利用したい当方にとっては、有り難いことではありません。追加された指定をまた消さなければならないのですから。また、calibreは画像も大胆に圧縮しています。これも元のEPUBを完成品とするなら、余計なお世話でしょう。

 従って、弊舎がkobo端末用のEPUBコンバーターとして採用するなら、kepubifyということになりますが、かといってkepubifyが書き出したxhtmlファイルをそのまま使えるわけではなさそう。一見してそのtextからは改行コードが消えてしまっています。そのままではさすがに訂正作業などがしづらいので、</p><p>間に改行を入れ直す必要があります。行頭の空白文字が消えてしまっているのも大問題。これはプレーンなEPUBの段階で、行頭空白は空白文字ではなくCSSでインデントを指定して対応することにします。また、余分なスタイルシートの指定やclass指定も若干見られますが、これらの書き換えはエディターの置換機能を使えばさほど大きな手間にはならないでしょう。kepubifyを使って、これからぼちぼちと、kobo端末によりフィットしたファイルに置き換えていこうと思います。

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晩霞舎本でチェックするEPUBリーダーアプリ

 スマートフォンやタブレットなどのスマートデバイス上でEPUBを読むことのできるアプリの現状はどうなっているのか。これまで弊舎で作ったEPUB本のうち、特に試金石となりそうな箇所、具体的には文中の挿絵・IVSによる異体字表示・表の3つを中心に、満足できる表示ができているかをチェックしてみました。

 俎上に乗せたアプリは、AndroidではソニーReader・Kinoppy・honto・kobo・Google Playブックス、iOSではiBooks・Kinoppy・honto・kobo・Google Playブックスの6ストア合計10アプリ。ストアを介さなくても自主制作のEPUB本をインポートできるアプリがこんなに増えていたのは嬉しいことです。ほとんどのものはEPUB読書アプリとしての基本的な機能を十分に備えているようですが、少し高度な機能を求めると、必ずしもすべてのアプリが安心して推奨できるとまでは言えなくなるようです。詳しいチェック結果は下の表を確認いただくとして、以下、3つの試金石ポイントごとの各アプリの評価を簡単にまとめておきます。

1.文中挿絵
 チェックポイントその1は文中の挿絵。これはアマゾンで公開している『航薇日記』の巻末に付けた紀行文で使った手法。EPUB版では紀行文は公開していませんが、アマゾン用の元原稿として作成したものがあるので、それを各アプリに読ませてみました。正しく表示されればこんな感じ。ページの上端・下端に写真を配置。サイズはページの40%の幅で、文章は適度なスペースを空けて回り込み、下に1行または2行の左寄せのキャプションという具合。技術的にはCSSで float:right; float:left; を指定して、文中に写真を挿入しています。
 このポイントでベストだったのはiBooksアプリ。要求通りの表示をするだけでなく、普通EPUBでfloat指定をすると位置によってはいやおうなく生じてしまう空白行が生じないよう、写真の位置を次ページに送ってくれます。そしてダブルタップすると鮮明な拡大写真がポップアップされます。満点です。空白行を作らず画像位置を調整するアプリとしては、他にAndroidのソニーReaderとiOSのkoboが上げられますが、ソニーReaderは私のタブレットではなぜか写真が小さく表示されしまうのが残念。一方koboはダブルタップするといきなり画面をあふれる大画像がポップアップされるのがご愛嬌です。Kinoppyは両OSとも空白行ありのfloat処理で、拡大は画像のポップアップではなくページまるごと。小さい画像を拡大しただけなので鮮明さに欠けますし、キャプションがなぜか右寄せになってしまいます。このチェックポイントでiBooks 以外に合格なのは iOSの kobo、なんとかセーフなのはKinoppyでしょうか。他は下表のように失格と言わざるを得ません。

2.異体字
 その2はユニコードIVSの異体字セレクターを使った異体字の表示。これは以前にテスト用に作った親子そば三人客を読ませてチェック。結果はご覧のようにソニーReaderと両OSのKinoppy・hontoがIVSに対応。非対応のアプリでも異体字セレクターを正しく無視して親字を表示すれば、とりあえずパスと言えます。iBooksは対応はしているようですが縦書きでは文字が横転します。koboはAndroidでは非対応、iOSで対応・横転という違った結果に。唯一、異体字セレクターの部分が文字化けしたのは iOSのGoogle playブックス。よってこのチェックポイントで失格は横転のiBooksとkoboと文字化けのGoogle play。いずれもiOSで、Androidには対応非対応とも致命的な破綻は見られませんでした。IVS対応アプリが意外に多かったのは嬉しい驚きです。

3.表
 3つめは表。『茅野蕭々詩集』の「初出・底本一覧」は縦書きの表になっていて、アプリによって表示が異なるのが気になっていました。こんなふうな表ですが、問題になるのはどこで改頁するか。単純な表なら簡単なのですが、2列目の大きな連結マスの部分が扱いを難しくしています。各アプリに読ませてみると、①2列目のマスに関係なくそのままページ幅でマスをすっぱり切ってしまうもの、②マスの切れ目で改頁してページによっては余白が出るもの、③両者を併用するもの、とに分かれることがわかりました。①はソニーReaderとiBooksと両OSのkobo、②はAndroidのKinoppyとGoogle play、両OSのhonto、③はiOSのKinoppy。なお、iOSのGoogle playは最初のページしか表示しないバグ状態。Androidのkoboにもページ端の罫線が消えるという問題があります。また、マスの切れ目で改頁する場合は、ページ末尾と次のページ頭、両方ともに罫線があることが望ましいのですが、残念ながら②のタイプのアプリはすべてページ頭の罫線を表示しません。
 こうした表と改頁の問題点をみごとに解決しているのが、iBooksと両OSのKinoppy。両アプリともメニューからスクロール表示が選択できるため、シームレスな一枚表として表示でき、大変見やすくなっています。またiBooksではスクロール表示を選択しなくても、表をダブルタップすると横書きの一枚表が表示され、やはりスクロールして見ることができます。iBooksでは最初に表示されるページごとの表は文字が大変小さく実用性にかけ、スクロール表示かダブルタップによって一枚表を利用することを前提としていると言えそうです。

 以上、3つのチェックポイントの他、下表の「環境設定」には各アプリの読書関連の設定機能、「特記」には晩霞舎本を表示させて気づいた特色や問題点を列挙していますのでご参考に。

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kobo touchの最新ファームウェア3.11.0(国内未公開)

 カナダ土産のkobo touchがいつのまにか自動アップデートされて最新の3.11.0というファームウェアになっていました。国内版楽天Koboのファームは2.6.0で止まったままですが、カナダのkobo本社ではこの古い端末にもコツコツと手を入れ続けていたようです。楽天がなぜアップデートを無視しているのか分かりませんが、面白い変化がありましたので、気がついた所を報告します。

変化1)ホーム画面はglo/auraと同様のパネルスタイルに変わります。glo/auraにはない(実機をもっていないのでたぶん)ブラウザを直接起動できるパネルがあるのは便利。ただし、Dropboxには毎回ログインを要求されます。

変化2)読書設定のページめくりのタップ位置の設定で、上下が進む戻る、真ん中が設定というパターンが選べます。片手持ちでめくる時、タップとスワイプで使うより便利かも。

変化3)ページ内リンク後の「戻る」がない! これはリンクを多用している晩霞舎本には致命的な仕様。楽天も電子書籍の制作ガイドで、トラブルが多いことを理由にページ内リンクを非推奨としていますし…。でも、ハイパーリンクは電子書籍の大きな強みの一つでは? 問題はスムーズに働かせられない、ミスを生みやすい操作体系にあるのでは? ただ、kobo端末はリンクをタップすると擬似ポップアップ的な動作をするので、注釈についてはそれで代用できます。

変化4)自作本でもkoboIDの追加なしで読書位置が残る! これは自主出版者にとって一番注目の変化でしょう。ハイライト・コメントも問題なし。やればできるじゃないという感じです。ライティングライフでkoboIDだらけの加工をするよりも、こっちのファームを適用する方がスマートではないでしょうか。ただし、ファイル名に.kepubが必要なのはそのまま。

その他の変化はこのサイトをご覧ください。楽天Koboに海外版ファームウェアを適用する方法も過去ログにあります。総評として今回のアップデートは画期的だと思います(各改良が、このバージョンで登場したものなのか、それとも少し以前のバージョンからなのかは分かりませんが)。ただし「戻る」が消えたのは頂けません。一方で「koboIDの追加なしで読書位置が残る」という改良が、今後日本版にも導入されることを願っています。

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アンドロイド版kobo感想

 先日、楽天koboのアンドロイドアプリが公開されましたので、さっそく試してみました。使用環境はAndroid4.2.1のNexus7で、他の環境ではまた印象は違ってくるかもしれません。

 まず嬉しいことに、kobo touchと違い、このアプリでは自作ファイル名に「.kepub」をつけなくても、EPUB3がまっとうに読まれますね。それに読書位置も、センテンスごとにkobo独自の番号を振ってなくても、ちゃんと残ります。栞も大丈夫そうです。つまり、ようやくオープンなEPUBリーディングシステムになったということで、これをぜひ専用端末の方にも拡大して頂きたいと思います。

 ただし、ちょっと触っただけで問題点が幾つか。まず、残念なことに反応が悪過ぎます。ページ送りなどもワンテンポ遅れる感じだし、連続してタップすると完全についてこれなくなります。特にファイルをまたぐページ送りは待たされる印象です。それに関連するのか、←→での移動はファイル単位で、全ページ通してのジャンプができないのが不便です。また、自作本では扉ページの後に空白ページが挟まったりします。扉は「ハリー・ボッター」を猿真似して画像埋め込みsvgにしていますので、そのせいかもしれません。さらに、全体にCSSの文字のサイズ指定が効いてない感じで、「羇旅漫録」では本文も割り注も同じサイズになっています。上付き・下付きで付けた注番号や漢詩の訓点なども大きいままです。

 うーむ、これではちょっと製品レベルに達していないと感じる人も多いのでは? 文字組みはkobo touch同様よく整っていて、たぶん国産端末では最高の読みやすさなのですが、ソフトがそれについてきてないのが実に残念、宝の持ち腐れというほかありません。

 面白いのはストア本以外の書籍ファイルの読み込み方で、他のアプリではファイルをダウンロードして「このファイルを開く」でアプリを選択したり、エクスポートでアプリのフォルダにコピーしたりするのが、koboではアプリ側に「コンテンツをインポート」というメニューがあって、それを選択すると、何とデバイスのメモリーカード内を検索して、インポート可能なEPUBファイルをすべて候補として列挙してきます。EPUBはぜんぶkoboが引き受けたというような力わざで、その意気やよしといいたい所ですが、肝心のアプリがこの出来では…。

 他の国産端末が古くて低機能でクローズドな既存フォーマットを引きずっている中、またアマゾンが独自フォーマットを押し立てて進撃して来る中、オープンなEPUB3を唯一のフォーマットとする楽天koboには頑張ってもらいたいし、「.kepub」によって残念ながら半オープンだったkobo touchに比べて、たぶんフルオープンに進化したアンドロイドkoboは大歓迎なのですが、現状では自作本のリファレンスリーダーにするのは難しい感じ。今後の改良と専用端末への拡大をぜひお願いしたい所です。

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KindleアプリでEPUB3→mobiを試す

 ついにKindle上陸。端末の発売は少し先になるようですが、ストアは昨日からオープンしていますし、スマートデバイス用のKindleアプリもアップデートされ、縦書き・ルビ打ちなどの日本語表示に対応したようです。ストアの品揃えを見ると、天下のアマゾンさんも苦戦しているようで、文学関係では既存の日本の電子書店が共通して持っているラインアップがすっぽり抜け落ちていたりします。XMDFや.bookなどの電子本を横滑りさせる方策を採っていないということでしょうか。けど価格的には、既存の電子書店より少しずつ安く設定されている感じで、価格決定権をアマゾンが握っているケースの多いことが窺えます。キワモノ本などは honto の半分以下の値付けになっていたりします。書籍のデータにはKindle版と紙の本の各エディションを比較した一覧まで作られていて、今後価格をテコに大攻勢をかける意欲満々といった雰囲気が早くも漂っています。

 そんな話はさて置き、気になるのは日本にやってくる電子ペーパー端末Kindle Paperwhiteのこと。EPUB3が実現した日本文表示をちゃんとフォローできているのか、文字組みは大丈夫かなど、興味津々。現在予約受け付け中で、11月中旬発売とのことですが、それまで待たなくても、アップデートされたスマートデバイスのKindleアプリを試すことで、表示の具合はかなりの程度推測できそうです。アマゾンからはKindle Previewerというソフトが既にリリースされていて、EPUBなどをKindleフォーマットに変換したらどんな表示になるかを確認でき、また変換したmobiファイルを書き出すこともできます。これまでKindle Previewerで確認した“EPUB3変換mobiファイル”の表示はとても満足できるものではなく、それを理由に上陸を危惧する記事もあった程なのですが、今回Kindle Previewerもアップデートされ、日本文表示が本番仕様に改善されていることが期待できます。

 そこで、自作のEPUB3ファイルをKindle Previewerにかけ、パソコンで表示を確認するとともにmobiファイルを書き出し、それをNexus7とiPad上のKindleアプリにアップロードしてみました。EPUB3からmobiへの変換はソフトが勝手にやってくれ、パソコン上では問題なく縦書き・ルビ打ち表示されました。それをスマートデバイスのKindleアプリにメール添付というレトロな方法で読ませると(Dropboxから読ませることができましたね)、iPadではどういうわけか横書き・ゴシックでしか表示されず残念な状態ですが、AndroidのNexus7では“EPUB3変換mobiファイル”は意図通りの表示を維持しています。これを見るとEPUB3は簡単にアマゾン形式に移行できるわけで、Kindle Paperwhiteでも同じ結果が期待できそうです。

 ただ、一つだけ問題を発見。右上の設定ボタン→移動で現れる目次が選択できません。調べてみると、Kindle形式ではEPUB2の toc.ncx やEPUB3のナビゲーション文書は読んでくれず、文書内目次のhtmlファイルを、移動からジャンプする目次ページとして指定する必要があるようです。指定は、パッケージ文書の末尾のguide要素に次のような1行を加えます。
<reference href=”Text/mokuji.xhtml” title=”目次” type=”toc” />
 EPUBリーダーでも目次の扱いがまちまちなのに、そこにKindleも加わって何ともややこしいことになってきましたが、これ以外はノータッチでEPUB3で作った本をKindleに移植できそうです。

 次に、少し突っ込んでKindleアプリの文字組み(=Kindle Paperwhiteの文字組み?)を見てみます。 右はそのキャプチャーですが、フォントはタイプバンク明朝というのを採用しているよう。このフォント、ご覧のように少々癖のある姿で、どんな文章にも向くといったものではないように思います。個人的には古典や鏡花をこのフォントで読むのは願い下げですね。それはともかく文字組みで気づいた点を幾つか。

 まず、行頭起こし括弧の天付き半角取り、これはソニーReaderと同じで個人的には嬉しくない姿です。ただ、連続約物が kobo のように間延びしないのはやはりReaderと同様のメリット。また、ルビは中付きで、1文字に3字以上のルビだと、親文字の前後の字間を広げる設定になっているようですが、これもReaderと同じ。このため総ルビの鏡花では字間が所々で開いて、個性的なフォントの姿とともに紙面の印象はkoboはもちろんReaderと比べてもあまりきれいとはいえません。文中のリンクには、装飾無しの指定を無視して、色文字と傍線という二重の装飾。ちなみにリンクはちゃんと効きますし、戻るボタンも比較的タップし易い位置にあります。禁則処理については特に問題はなさそう。ReaderやKinoppyに見られるくの字点の泣き別れもありません。それから句読点のぶら下がりを普通にやっていて、これは他のリーダーにない特色です。他に文字画像などのインラインの画像が少し右寄りに表示されるのが気になりますが、これはkoboでも見られます。

 こうして見ていくと、文字組みに関しては先行の国内リーダーと遜色なさそう。フォントのせいで紙面の印象が他の2機に劣るのは残念ですが、もはやこのままのスタイルでPaperwhiteになだれ込むことになるのでしょうね。もちろん電子書籍リーダーの価値は文字づらだけで決まるものではなく、ハード・ソフト的な使い勝手や流通システムとの連携といったことも重要で、特に後者が圧倒的にすぐれているのがアマゾン。加えて、膨大な利用者数を背景にした自主出版をサポートするシステム「Kindle ダイレクト・パブリッシング」もアマゾンの独壇場で、それが日本でどれだけ広がるのか、またEPUBでの本作りにどんな影響があるのか、今後目が離せないところです。

追記:iPadのKindleアプリで横書き・ゴシックになってしまう件。iPod touchでも同様で、iOS全般の現象みたいですね。けど、Kindleストアで購入した本はiOSでもちゃんと明朝・縦書きになりますから、アマゾンの所謂パーソナル・ドキュメントの扱いが、iOSのKindleアプリではまだ不完全なようです。
 ついでにiOSでの表示フォントは、OSデフォルトのヒラギノ明朝になっていて、Kindleデフォルトのタイプバンク明朝とはずいぶん印象が変わります。ところで、そのタイプバンク明朝ですが、見慣れてくると一種丸文字的(あるいはへた文字的w)なイメージを加味した風の親しみやすい雰囲気があり、古い文章でも随筆系ではそれなりに合いそう。たとえば、無料本になっている泣菫の『独楽園』なんかではほっこりしていい感じになります。けど、あらゆるタイプの文章を表示する電書端末にふさわしいかというと、それは大いに疑問ですね。

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Google playブックスで読む和本

 Googleによる日本での書籍の販売が先月末から始まりましたね。パソコンだけでなくアンドロイド端末からもGoogle playブックスを通して本を買うことができ、グーグルのアカウントと専用読書アプリを介してiOSでも読むことができるようです。のぞいてみると、ここもご多分に洩れずコマ不足のようで、Google playブックスのトップページにはコミックとビジネス書と無料の青空文庫や海外の名作が並ぶだけで、そのアプリストアほどには食指は動きません。

 でも、忘れてはいけません、Googleには膨大な著作権切れ書籍のアーカイブがありました。その扱いはどうなっているんだろうと、Google playブックスの検索窓に「詩鈔」などという古色蒼然たるタイトルの断片を打ち込んで見ると、驚くなかれ隠れていた書庫の扉が開いて、Googleが慶応義塾図書館の協力で作り上げた十万冊ともいわれる和本・和書のアーカイブがリストアップされてきました。そして本を選択すると、従来よりも遥かに読みやすくなった閲覧ページが現れます。さらに特筆すべきは、アンドロイド端末・iOS端末に用意された専用ビュワーでのPDF書籍の表示のスムーズさ。下の動画のように、まるで本棚から本を選んでページを繰るように実にスムーズに江戸の漢詩集を楽しむことができました。

 これまで遅い表示や融通のきかないページ送りを我慢しながら、ダウンロードしたPDFをソニーReaderやiBooksで読んでいたのが嘘のような快適さです。特にplayブックスと同時に発売された7インチのアンドロイドタブレットNexus7で読むと、文字の大きさも適度だし、本体のサイズや重さもぎりぎり読書端末として常用できる範囲で、まさにGoogleアーカイブを読むためにある端末といいたいほど。また、iPadでも専用アプリで同様にスムーズに読め、画面を横にすると見開きで、縦では1ページずつと使い分けられるメリットもあります。

 一つ残念なのはGoogle playブックスから導入した以外の、たとえば国立国会図書館の近代デジタルライブラリーからダウンロードしたPDF書籍などの外部ファイルは読めないこと。けれど、近デジのPDFについては、Reader for androidというPlayブックスビュワーに劣らない優れものが最近になって登場し、にわかに日本の二大アーカイブを巡る読書環境が充実してきたという印象です。ソニーのアンドロイド読書アプリ、Reader for androidについてはまた項を改めて。

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「羇旅漫録」で苦労した点

 先日、四つめのEPUB本「羇旅漫録」をアップしましたが、その制作も暗中模索・試行錯誤の連続。まあ、多くは自分のスキル不足が原因なのですが、なかにはEPUBの規格やリーダーの仕様によるものもあります。制作の過程で見えてきたことを、以下にまとめておきます。

FUSEeβを初使用
 この本は鏡花本の場合と違い、古典といっても味読系ではなくいわば情報系で、どう書かれているかより、何が書かれているかが肝。で、思い切って読みやすさを重視して本文を新字・新かなにしてしまいましたので、二三の外字画像を使った以外は、旧字関係の苦労は回避できました。また、ルビの量も総ルビの鏡花本とは大違いだったので、制作はinDesignを介さずに、エディターで加工した元テキストをFUSEeβ に取り込んで行いました。FUSEeβはEPUBを直接編集するSigilと違い、プロジェクトファイルを保存してそこからEPUBを書き出すスタイルのソフトですが、定型的な工程はSigilと同じように自動化されているようで、違和感なく使うことができました。ただ、高価なマニュアル本を買わずに手探りで使っていますので、パッケージ文書などを手編集した際、下手なことをやってしまってプロジェクトファイルが開けなくなったりといったことも。書き出していたEPUBファイルを読み直して再開できましたが、自動化が主体のソフトだけに手編集への許容度は低いのかもしれません。また、一応完成した後のEPUBファイルの小さな手直しはSigilの方が手っとり早いのでこちらを使っていますが、SigilはSigilでドキュメントを勝手に書き替えてしまうことがあり気が抜けません。もともと個人が効率に関係なくシコシコやっていることながら、制作の流れはまだまだ流動的で不安だらけです。

挿図の位置はリーダー任せ?
 この本には大小の挿図がけっこうな数あり、今回はそれをどう入れるかに苦心しました。挿図は大きく分けて、①1ページを丸々占めるもの、②上寄せか下寄せか天地100%で文中に置くもの、③行内に文字と連なって置くもの、の3種類がありましたが、悩ましいのは①と②、特に②。図の入る位置にスペース(横幅)が十分にない場合は、図は次のページに送られてしまい、前のページには大きな空白ができてしまいます。1ページ大の図の場合は関連した文章の次のページに図のページが来るので、多くの場合文章の後に空きができるのは、まあ仕方のないことですが、②の挿図でこれが起こってしまうのはちょっと苦しいという感じがします。文字組みが決まっていれば、イメージタグの挿入位置を前後させることでうまく収めることもできるのでしょうが、リーダーによって文字組みは異なりますし、読者が文字サイズを変えることによっても違ってきます。あらゆる条件でベストな挿図の位置などというのは、現状では実現不可能でしょう。このようなことが起こるのは、文章の特定の位置にしか挿図の指定が行えないからですが、それをもっと幅をもたせて一群の文章のどこか適当な位置に置くといった指定ができて、それをリーダー側が空白が出ないように塩梅できるようになれば、もうちょっと改善されるのではないかと思いますが、果たしてそんなことが可能なのかどうか。

リーダーによって違うナビゲーション文書
 EPUBにはナビゲーションドキュメントというものが必須で、リーダーはこの文書を目次表示機能で利用しています。EPUB2までは.ncxという拡張子の書類がそれで、コンテンツ内に目次を置きたい場合は、それとは別に目次ページも作らなければならなかったのですが、EPUB3からはXHTMLのナビゲーションドキュメントを一つ作れば、それがリーダーのシステム目次とともにページ内の目次も兼ねるようになりました。もちろん、EPUB2のように別途目次ページを用意してそれを使うことも可能です。
 ややこしいのが、リーダーによってこのナビゲーションドキュメントの扱いが異なるということです。たとえば、iOSのKinoppy・bREADERとkoboは.ncxとXHTMLの両方、つまりEPUB2・3のナビゲーションドキュメントを利用できますが、ソニーReaderは.ncx文書しか読んでくれません。だから、ソニーReaderに対してはシステム用の.ncx文書と本文用の目次が必要です。一方、Kinoppy・bREADERとkoboはXHTMLのナビゲーション文書一つあればシステム用と本文用を兼ねられるはずですが、Kinoppy・bREADERにEPUB3のナビゲーション文書を本文目次として読ませると、EPUB3の規定通りにリスト形式で記述されたその目次は、何と改行されずに一連なりになって表示されてしまう、つまり目次として使えないということが起ります。ややこしいですが、まとめるとこういうことです。

    システム目次 本文目次
nav.ncx(EPUB2) nav.xhtml(EPUB3)
ソニーReader × 別途用意
楽天kobo ナビ文書兼用可
iOS Kinoppy・bREADER 別途用意
(bREADERはリンク不可)

 つまり、koboだけならEPUB3のナビゲーションドキュメント1つで完結するのですが、ソニーReaderとKinoppy・bREADERのことを考えると、結局3つの目次関係の文書を用意しなければならないということになります。いや、厳密にいうと、現状ではEPUB3のナビゲーションドキュメントはなくても構わない(鏡花EPUBはそうです)のですが、今回はFUSEeが自動で作ってしまったし、EPUB3と名のる以上はやはり置いておかなくちゃ、という次第です。
 ところでもう一つ、目次に関して落とし穴がありました。今回の「羇旅漫録」はKinoppyではなぜかシステム目次が空白になり表示されないのです。同根のリーダーであるbREADERには問題がないのにどうしたことかと、色々試してみて結局分ったのは、ナビゲーションドキュメントにマーカーが使われているのが原因だということ。ファイル内リンクのための#を頭につけたマーカーがあるとKinoppyはその目次を読まないようです。仕方なくKinoppyでは、ファイル内リンクを省いたおおざっぱな目次のみでお茶を濁しています。

koboの栞対策
 前回の投稿でも触れたkoboで自作EPUBを読むと、栞(読書位置)が残らないという現象。一番の対策はセンテンスごとに< span >タグで一定の番号を振ることのようですが、それはあまりに手間なので、「羇旅漫録」では各項目ごとに< section >タグで括って、kobo.1.1から始まる番号を振っています。これで一応は栞が残りますが、次に開いた時は各項目の頭、つまり見出し部分に戻ることになりますので、複数のページに渡る項目では厳密に読んでいたページが記録されるというわけではありません。また、全文検索ではピックアップはしますが、単語の位置へのジャンプはできないようです。

 「羇旅漫録」制作で出くわした主な問題点は以上ですが、他にもソニーReaderではカバーの書影が扉の画像に固定されていてパッケージ文書での指定が効かない、koboのシステム目次で、同一ページに二つの目次項目がある場合、後ろの項目へしか飛べない、前の項目をタップするとファイルの先頭へ飛んでしまうといった、各リーダーに起因する問題があり、これらに対しては今のところお手上げです。いずれにしても作ることで問題に出くわし試行錯誤しながら何とか対策を見いだしていくというスタイルで、これからもEPUBとじっくり楽しくつきあって行きたいと思っています。

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追加情報3つ

楽天koboで栞(読書位置)を残す方法
 前回の投稿の最後に追記したように、楽天koboで自作EPUBを拡張子を.kepub.epubにして読むと、表示自体は満足できるものになるのですが、読書位置が残らないという痛すぎる現象が起こります。その回避策として、各センテンスごとに< span id=”kobo.1.1″ >~< /span >という具合に< span >タグで括って一定の番号を振っておくという方法がネットで紹介されています。これで検索も働くようです。同様に< p >タグに番号を振っても栞は残るようですが、検索は効かないよう。どっちにしても自動化の手段がないととんでもなく手間がかかりますし、ファイルも重くなってしまいますので、あまり現実的な対策とはいえないように思います。

KinoppyがIVSに対応。文中リンクも
 iOS読書アプリのKinoppyが1.2.2にバージョンアップして、bREADERに続いてIVSに対応しました。他にサロゲートペア、EPUB固定レイアウト、そして待たれた文中リンクにも対応と、一気のステップアップです。ただ、そのせいかずいぶん重くなってしまったようで、iPod touchでは鏡花本が頻繁に落ちます。もはやiPhoneかiPadでしか満足に動かないようですね。ソニーReaderは異体字セレクターをきれいに無視するし、サロゲートペアには対応しているようですので、部分的に文字化けする楽天koboのことを考えなければ、鏡花EPUBは全部IVS化してしまってもかまわないかもしれません。

「ハリー・ポッター」は参考になります
 情報としては古くなりましたが、7月末に発売された「ハリー・ポッター」の電子書籍シリーズ。電子透かしを利用した事実上のDRMフリーに引かれて一冊購入して、さっそく腑分けして勉強させてもらっています。面白いのはナビゲーション文書が3種類もあること。目次はncxで表示したり、リスト形式の目次が表示できないリーダーがあったり、バラバラな仕様に対応しようとするとこういうことになってしまうようです。あと、扉画像を< svg >タグで括ることで安定して扉表示ができるようで、その辺りの仕組みは私にはチンプンカンプンなのですが、とりあえず猿真似させてもらおうと思っています。他にも参考になるテクニックがいろいろ蔵されていそうです。
 その「ハリー・ポッター」、何の気なく読み始めてみましたが、なるほどこれは面白いですね。英国ファンタジー文学の伝統を受け継いだ、文章も構想も読み応えのある大作で、日本の宮崎駿などのアニメ・ファンタジーとはまったくの別物、あくまでこうして読んでこその作品という気がします。そういう意味で大冊の物理的・経済的負担を軽減した今回の電子化は、電子書籍の利点を印象づけるいい企画だったのじゃないでしょうか。直売サイトのポッターモアから最初はソニーReaderにダウンロードしたのですが、すぐにkoboへの同期が可能になったので、フォントと文字組みの勝るkoboでもっぱら読んでいます。もうすぐ出るらしい新Reader PRS-T2の文字の姿はどうなるでしょうか。

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KinoppyでEPUB3入門

 紀伊国屋書店の iOS・アンドロイド向け電子書籍アプリ「Kinoppy」の評判がこの所、鰻上りのようです。EPUB3 にも対応しているという話なので、このアプリをターゲットに EPUB3 書籍の制作に遅まきながら踏み込んでみることにしました。個人的には電子読書の本流は電子ペーパーの専用端末だと思っていますが、ソニーReader がなかなか EPUB3 に対応してくれなかったので、しびれを切らして手持ちの iPad を相手に悪戦苦闘してみた次第です。

 素材は例によってルビと外字だらけの鏡花。『短編選世話編』に入れた「親子そば三人客」を切り出して、inDesign CS5.5で EPUB に書き出すところからスタート。書き出し設定はデフォルトのままで、フォントの埋め込みは外しました。それを Dropbox を介してiPad上の Kinoppyに読み込ませると、こんなことに。

 行がえらく詰まって、ルビが隣の行と重なってしまっています。文字化けもありますし、ページの流れも逆です。それによく見ると、行末がかなり不揃いです。これらを一つ一つ潰していく必要がありますが、EPUBファイルとは要するに、HTMLファイルと CSSファイルその他をまとめて ZIP圧縮したものとか。HTMLについてはテーブルタグをやり繰りしてレイアウトしていた昔の知識しかなく、CSSなんかはほとんど勉強せずに来てしまったので、ここからはほとんど手探りです。

 EPUBファイルの編集は、最初は解凍して中のCSSやHTMLをエディターでいじるという正攻法のスタイルで始めましたが、レイアウト的には単純な文章ものに複雑なCSSコーディングなどは必要なく、もちろんそんな知識もなく、また再度圧縮し、出来具合を見てまた解凍して訂正という手間にもうんざりして、結局は解凍・圧縮の手間のいらない Sigil をメインに使うことにしました。

 さて、まずはレイアウトに関する要素が収められているらしい template.css をのぞいてみます。いきなり目に飛び込んでくるのは、喜ばしき縦書き宣言、「writing-mode : vertical-rl;」ですが、ネットにはこれだけでは不十分で 「-epub-writing-mode : vertical-rl;」 や 「-webkit-writing-mode : vertical-rl;」を加えるべしと書かれていることが多いのですが、Kinoppyは最初のものだけで縦書きにしてくれているようです。

 それはともかく、ずっと見ていくと、本文のスタイルに関する次のような項目が出てきました。
font-family : “Hiragino Mincho Pro W3”, serif;
font-weight : 300;
font-style : normal;
font-size : 0.94em;
text-decoration : none;
font-variant : normal;
line-height : 1;
text-align : justify;
color : #000000;
text-indent : 0px;
margin : 0px;
 まずは、「line-height」で行送りを広げます。ルビのことも考えて、ここは2としました。次に「font-size」を少し大きく。Kinoppyはピンチイン・アンチアウトで自由に文字を拡大縮小できるという優れもので、特に必要のない変更とも言えますが、開いてすぐに読みやすいサイズであるに越したことはないので、適当に1.06emとしました。このemというのは、相対単位らしいのですが、ならば基準となる単位はどこに規定されているのか、私にはよく分りませんでした。

 ところで、最初の行にはフォント指定があり、inDesign がヒラギノ明朝Proを指定しています。Kinoppyには秀英明朝体をダウンロードして利用できる機能があって、iPadにもダウンロードしているのですが、この「親子そば三人客」のフォントはどう見ても、秀英体ではなくヒラギノです。フォントの埋め込みはしていませんから、このヒラギノはどこから来たのだろうと調べてみると、なんとiOS5にはいつの間にかヒラギノ明朝Pro Nが搭載されていたよう。inDesignで使っているのはヒラギノ明朝ProでPro Nではなく、厳密には同じフォントではありませんが、そこは融通を効かして?このきれいなフォントを使ってくれているようです。

 で、問題の文字化けは、このテキストでは「割」「雪」「燗」「音」「廻」で発生していて、inDesignでそれぞれに字形パレットで異体字を適用しています。他にも異体字を当てた字は多く、それらは基本字に変更されて問題なく表示されているのですが、なぜかこの5文字では化けています。とりあえず、inDesignで異体字の適用を外して作り直すことにします。(つまり、EPUB3ではユニコードにない異体字については当面は断念。SVGフォントで外字を表示できるとかできないとか、そんな話も聞えてきますが、それはこの先の課題とします)

 そして、行末の不揃い。CSSには「text-align : justify;」の記述があり、両端揃えの指定がちゃんとされています。ところがよく見ると、行末・行頭にまたがった熟語が、まるごと次行に送られてしまっているのです。どうも振られたルビが分割できないためのよう。inDesignでルビを付けた際、グループルビにしたのが原因でしょう。仕方なく熟語をすべてモノルビにして書き出し直しました。以上の作業を一つ一つ効果を確かめながら進めて行った結果がこれ。

 ようやく読みやすくなりました。頭にタイトルもつけてみました。ここまでは何とか自力で来たのですが、ページ送りの問題がまだ残っています。最初誤解していたのですが、上の「writing-mode : vertical-rl;」の「rl」は行送りの指定でページ送りではないようです。ググってみると、ページ送りの指定として<meta property=”page-progression-direction”>rtl</meta> と <spine page-progression-direction=“rtl”>というのが出てきました。とりあえず該当すると思われる個所に当てはめてみると、前者は効果ありませんが、後者でめでたくページ送りが右から左になりました。この辺は完全に泥縄式です。CSSをちゃんと勉強しなくちゃいけません。

 最後に、inDesignで書き出す際に表紙のカバー画像をつけ、さらにSigilで章の分割を行なって、冒頭のタイトルを扉扱いにします。ここも表紙と同じ画像を貼りました。Sigilのメタエディターでメタデータを付加してとりあえず完成です。素人が泥縄式に作ったいい加減な代物ですが、下にリンクしています。iOS版のKinoppyとソニーReader以外では未確認です。

 ところでKinoppyの使用感ですが、評判通りの使いやすいリーダーアプリでした。フォントの埋め込みには対応していないようですが、ダウンロードした秀英明朝やiOS内蔵のヒラギノ明朝で完成度高く縦書き・ルビ打ちのEPUB3が表示できます。使い勝手の面では、ピンチイン・アウトで文字を自由に拡縮して、好みの比率で固定できる仕組みは秀逸だと思います。また、文字組み面では、文中の約物は連続約物も含めて全角が原則になっているようですが、行末の連続約物は半角固定で、ぶら下がりも行なって禁則処理に対応しているように見えます。行頭の鍵括弧が半角固定でない分、私にはソニーReaderの文字組みよりも自然に感じられました。

 なお、紀伊国屋書店の電子書籍ストアには、KinoppyだけでなくソニーReaderからも直接(旧型はパソコンを介して)アクセスして本を購入することができます。逆にReader StoreはKinoppyに対応していませんので、スマートデバイスで読むことも考えた場合は、紀伊国屋書店をメインの電子書籍ストアにしておく方が便利かもしれません。ただし、品揃えはどのストアもまったく貧弱なものですから、出版デジタル機構によってスキャン画像貼り付けでない質の高い書籍データ(となればもちろんEPUB)の蓄積が一気に進むことを期待しています。

 親子そば三人客

 親子そば三人客(フォント埋め込み版・ソニーReader旧型用)

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ソニーReaderのEPUB2を試す

 首を長くして待っているソニーReaderのEPUB3対応ですが、一向に音沙汰なし。もちろんパソコン上で使えるリーダーソフトは既に幾つか出ていますが、いま一つ触ってみる意欲がわきません。もとよりパソコンなんかで読書ができるはずもなく、ベンダーによって実装具合も違うようだし、どうせEPUBで苦労するなら、パソコンソフトなんかじゃなく、読書端末を相手にしたい。

 そんな次第で、とりあえず新しいソニーReader、PRS-T1が実装しているEPUB2.0の具合を試してみることにしました。組版の具合などあまり突っ込んだことを試しても、3.0ではどう変わるか分らないし、またそんな知識もないので、フォントの反映具合と、鏡花電子本ではポイントになる旧字の表示について確かめてみることにします。ネットではソニーReaderのEPUBはゴシックしか表示しないとか、いやCSSで設定すれば大丈夫とか、いやいや新しいリーダーではフォント指定が効かなくなったとか、いろんな話が交錯していますが、ほんとの所はどうなんでしょう。

 素材に使ったデータは、上のような一連の漢字。鏡花本を校正する時に使った新字→旧字のチェックリストです。鏡花本の入力で一番苦労するのはルビと旧字ですが、アドビのinDesignを使うとどちらもずいぶん楽になります。それでも、おとなしい書体が気に入ってHG明朝という古いフォントを使ってしまったこともあって、後から後から見落とした旧字が見つかり、検索で捜しては字形パレットで旧字あるいは異体字に置き換えるという作業を繰り返すことになりました(今もやっています)。これはそのチェックリストの一部を切り出してPDFで出力したものです。

 これをinDesignでEPUBに書き出してソニーReaderに読ませてみたのが次の画像。明朝あり、ゴシックあり、?ありで、変なことになっています。しかし、よく見ると矢印の左側の漢字はみんなちゃんと表示されています。しかもデータ通りの明朝体です。実はこの左側にはHG明朝を使っています。inDesignはEPUBを書き出す際、フォントの埋め込みとCSSでのフォント指定を行なってくれます。この部分はそれがきちんと反映されているようです。

 ところが右側はうわさのゴシック化けです。しかも読めてない部分も。左側と何が違うのか。ここには小塚明朝Pr6Nというのを使っています。ユニコードはもちろん、異体字にも対応しているという強力なフォントです。だからこそ、inDesign上では鏡花の漢字もほぼ完全にカバーできます。つまり、公開している鏡花PDFはHG明朝を中心に部分的に小塚明朝の交じった、フォントのチャンポン状態なのです。全部小塚にすればいいのですが、小塚の平仮名がちょっと気に入らない次第です。

 それはともかく、右と左と何が違うのか。HG明朝はTTF(トゥルータイプフォント)ですが、小塚はOTF(オープンタイプフォント)、とりあえずそれぐらいしか思いつかないので、試しにFontForgeというフリーソフトを使って小塚をTTFに変換してみました。そしてinDesignで小塚TTFを適用し直しEPUBに書き出したのが下の画像。どういうわけだか分りませんが、うまく明朝になりました。ソニーReaderのEPUB2.0は、フォントの埋め込みとCSSの設定で任意のフォントを表示することができる、ただしフォントによってはうまく行かない場合もあるというのを、とりあえず一つめの結果としておきます。

 次に旧字の表示の具合を見てみます。私の大雑把な理解では、EPUBにおける旧字というのは2種類あります。EPUBは文字コードとしてユニコードを採用していますが、そのユニコードの独自番号を持った旧字と持たない旧字です。独自番号を持った旧字は、当然ユニコードに対応したフォントを使えば問題なく表示できます。上の例でいえば、内・清・炭・強の旧字体で、ソニーReaderでも表示できています。一方、独自番号を持たない旧字、いわゆる異体字はそのままでは表示できないので、異体字セレクタという追加番号のようなものを付加して基本となる字と区別するようです。この異体字セレクタに対応したフォントはまだ少ないのですが、ここで使っている小塚明朝はその一つです。

 だからinDesignでは一番上のPDFのように思い通りに旧字を出力することができます。しかし、それをEPUB化してソニーReaderで読むと、一番下の姿・習・急・朝のような結果になり、旧字体は反映されていません。どこに問題があるのか、改善する方法があるのかは、今のところ私にはさっぱり分かりませんが、それよりも次のEPUB3.0へのアップデート後が気にかかります。ソニーリーダーで、というか、読書端末で異体字が選べないとすると、古典作品の本格的な器としての可能性は狭くなってしまいます。

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