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kobo端末のダウングレード法

 「EPUB本の読み方」に書いたように現在、楽天kobo端末からDropbox上の書籍ファイルをダウンロードすることができなくなっています。私の環境では、初代kobo touchとkobo glo HDにともにバージョン4.5.9587のファームウェアが降っていて、ともにダウンロードに失敗します。現在、ソニーReaderからもDropboxへログインができず、スマホやタブレットでますますクラウドとの連携が加速する時代に、専用読書端末がクラウドに対して閉じているというのはなんとも残念な状況です。ただし、kobo端末ではファームウェアをダウングレードすることでDropboxからのダウンロードが可能になりますので、その手順をメモしておきます。ダウングレードはもちろん自己責任でお願いします。←2017年9月現在、ダウングレードした端末からもDropboxファイルが利用できなくなっています。残念ながら kobo端末からの安定したDropboxの利用は望み薄かもしれません。

1)「MobileRead Wiki」から旧版ファームウェアをダウンロード。kobo端末はMark3~Mark6まで分類されているので、自分の端末がどれにあたるかを分類表で確かめて、ファームウェアの一覧からダウンロードします。kobo glo HDでDropboxが使える最新のファームは4.1.7729であることは確認していますが、初代kobo touchはあまりにインターネット周りの動作が緩慢で、確かめることを断念。おそらく3.xのファームまで戻ることが必要かもしれません。

2)ダウンロードしたzipファイルを解凍。中に「upgrade」フォルダと「KoboRoot.tgz」ファイルと「manifest.md5sum」ファイルの3つがあることを確認。

3)kobo端末をUSBでパソコンに接続。画面でPCと接続するか聞かれるので、接続をタップ。

4)PC上に現れる「KOBOeReader」の中の「.kobo」フォルダーを開き、先ほど解凍した3つのフォルダとファイルをそこにコピー。

5)ハードウェアの取り外し手続きをして端末からUSBを外す。

6)自動で端末が再起動し、ダウングレード完了。

*「MobileRead Wiki」のマニュアルには、ダウングレードの場合、事前にファクトリーリセットをした方がいいかも、と書かれていますが、私の環境では初代kobo touch・kobo glo HDともにファクトリーリセットなしでダウングレードできています。
*端末の設定の「同期/お知らせ」から「自動バックグラウンド同期」をオフにしておかないと、またファームウェアが最新のものにアップデートされてしまいますので、そのまま旧版でDropboxとの連携を維持したい場合はお忘れなく。ホーム画面の「同期する」もノータッチで。

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kobo glo HD レビュー

glohd 久々に専用読書端末を買いました。7月23日に発売された楽天のkobo glo HDです。電子本の検証用端末が古いものばかりなので更新の必要を感じてのことですが、前投稿で触れた古いkobo touchに降ってきた新しいファームウェアが最新の端末ではどうなっているのかにも興味がありました。そこで、読書の視点と制作の視点の両方から、気づいた点をまとめてみます。

本読みの視点では…
 筐体のコンパクトさ・質感、スペック、コストパフォーマンス、どの点でも現在ベストなEPUBリーダーでしょう。バックライト付きの画面は常に明るく、表示は十分に精細で、これを使った後、以前の表示密度の粗い端末に戻ると、文字表示の不鮮明さにがっかりすることになります。紙の本で言えば、新刊書籍と数十年前の古本の印刷の差といったところでしょうか。もちろん、文字というのは少々不鮮明でも問題なく読め、場合によってはそれが味に感じられもするものですから、古本の価値が印刷品質によって損なわれることはないのですが、電書端末の場合は一世代前の表示環境に戻る意義を探すことは難しいでしょう。以後、読書はもちろん、制作したEPUB 本の文字校正にも主にこの端末を使うことになるのではないかと思います。ただ、kobo 端末には下に触れるkoboID がらみの難点があるので、本当はソニーReader のPRS-T4 がこのスペックで出ていてくれたらよかったのですが、もはや永遠にかなわない願いですね。

 ただし、使用上、退歩したと感じられる点も。ハード面ではSDカードスロットが無くなりました。ということは、自炊本や拙サイトのような自主流通本を読み込む時は、ケーブルで繋ぐのでなければ、クラウドストレージに頼ることになるのですが、DropboxやOnedriveにアクセスするブラウザーがもたつき気味で、しかも旧機ではログイン状態をある程度記憶していてくれたのが、glo HDでは毎回ログイン手続きを求められる始末。SDスロットを無くすのであれば、KinoppyアプリのようなDropbox連携とまでは行かなくても、もう少しスムーズにクラウドが利用できるようにしてほしかったと思います。まあ、自炊本や自主流通本などは知ったことではないと言われれば、それまでなのですが。

追記)2018年10月現在、上のDropboxを利用したEPUB本の読み込みはできなくなっています。おそらくDropboxの仕様変更のためでしょうが、kobo端末(glo HD以外も含め)からDropboxにアクセスしてファイルをタップしてもダウンロードが始まりません。従って、kobo端末に自主流通EPUB本を読み込ませる方法は、ケーブル接続かSDカードということになります。ただし、glo HDにはSDカードスロットがありませんので、ケーブル接続一択という寂しいことになってしまいました。今やクラウドの利用はあらゆるネット端末の必須機能ですから、一刻も早い回復を願いたいところです。※Dropboxにログイン後、デスクトップ版に移動することでダウンロードは可能です。詳しくは右の「EPUB本の読み方」へ。

本作りの視点では…
 前投稿で触れたように、海外版旧機に降ってきたファームウェア3.11.0ではリンクジャンプ後の「戻る」ボタンが存在しないという、拙サイトのように注記を多用するEPUB本には致命的な改悪が施されていました。しかし、本機のファーム3.16.10では「戻る」ボタンはめでたく復活していて、ホッと一安心。一方、前投稿でも触れた「koboIDなしで読書位置が残る」という改良は受け継がれています。特に「koboIDなしで…」の改良は、これまでせっせと手動でID振りをやっていた私のようなローテク制作者にはこの上ない朗報と言いたいところなのですが、子細に見ていくと実は同時にデメリットも生じていることが分かってきました。

 koboIDを振っていないEPUBファイルをglo HDで読むと、確かに一度本を閉じても(すなわち上の家マークをタップしてホーム画面に戻っても)、もう一度本を開くと前回読んでいたページに確実に復帰できます。しかし問題はその先で、読み続けようとページめくりをすると、復帰したページによってはページめくりが正しく行われないという現象が起こります。従来のkobo端末では、koboIDを振っていないEPUBを閉じると、常に読んでいるhtmlファイルの先頭を読書位置として記憶していましたが、実はこのglo HDでも一応前回のページに復帰はするものの、そこからページを繰ろうとすると、結局はhtmlファイルの先頭からしかページめくりができない、という奇妙なことになってしまっているようなのです。だから、たまたまファイルの先頭に復帰した場合を除いて、ページめくりは多くの場合正しく行われないということになります。これでは、改良と見えたページ復帰の機能が、かえって読者を混乱させます。

 つまり、glo HDは見せ掛けのページ復帰はするものの、実は従来通りkoboIDがないと正しくページ操作ができない、ハイライトやコメントも残せない。従ってglo HDにはこれまで通り、いや、これまで以上にkobo IDが不可欠というのが結論です。kobo端末がEPUB2書籍の大きなストックを持つカナダのKobo社主導で作られている限り、このkoboIDやkepub の呪縛は解消できないのかもしれません。

追記)kobo glo HD のファームウェアがさきごろ3.19.5613に更新され、アップデートを適用した端末では上記の見せかけのページ復帰の問題は解消されました。koboIDがない場合は従来通りhtmlファイルの先頭に復帰します。(2015.12.09)

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kobo touchの最新ファームウェア3.11.0(国内未公開)

 カナダ土産のkobo touchがいつのまにか自動アップデートされて最新の3.11.0というファームウェアになっていました。国内版楽天Koboのファームは2.6.0で止まったままですが、カナダのkobo本社ではこの古い端末にもコツコツと手を入れ続けていたようです。楽天がなぜアップデートを無視しているのか分かりませんが、面白い変化がありましたので、気がついた所を報告します。

変化1)ホーム画面はglo/auraと同様のパネルスタイルに変わります。glo/auraにはない(実機をもっていないのでたぶん)ブラウザを直接起動できるパネルがあるのは便利。ただし、Dropboxには毎回ログインを要求されます。

変化2)読書設定のページめくりのタップ位置の設定で、上下が進む戻る、真ん中が設定というパターンが選べます。片手持ちでめくる時、タップとスワイプで使うより便利かも。

変化3)ページ内リンク後の「戻る」がない! これはリンクを多用している晩霞舎本には致命的な仕様。楽天も電子書籍の制作ガイドで、トラブルが多いことを理由にページ内リンクを非推奨としていますし…。でも、ハイパーリンクは電子書籍の大きな強みの一つでは? 問題はスムーズに働かせられない、ミスを生みやすい操作体系にあるのでは? ただ、kobo端末はリンクをタップすると擬似ポップアップ的な動作をするので、注釈についてはそれで代用できます。

変化4)自作本でもkoboIDの追加なしで読書位置が残る! これは自主出版者にとって一番注目の変化でしょう。ハイライト・コメントも問題なし。やればできるじゃないという感じです。ライティングライフでkoboIDだらけの加工をするよりも、こっちのファームを適用する方がスマートではないでしょうか。ただし、ファイル名に.kepubが必要なのはそのまま。

その他の変化はこのサイトをご覧ください。楽天Koboに海外版ファームウェアを適用する方法も過去ログにあります。総評として今回のアップデートは画期的だと思います(各改良が、このバージョンで登場したものなのか、それとも少し以前のバージョンからなのかは分かりませんが)。ただし「戻る」が消えたのは頂けません。一方で「koboIDの追加なしで読書位置が残る」という改良が、今後日本版にも導入されることを願っています。

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ソニーReaderのfloat処理に拍手

 ソニーReaderのアップデート情報、追加。

 今になって気づいたのですが、Readerは画像に文字を回り込ませる floatに関して、かなり進んだ処理を実装しているようです。

 自作本の『航薔日記』のアマゾン Kindle販売版には、末尾にオリジナルの紀行文を追加していて、その文中に挿入した写真には、文字が写真を回り込んで配置されるよう CSSで floatを指定しています。ところが、この floatが EPUBリーダーにとって難物のようで、たとえば指定した位置に写真が十分に入るだけのスペース(縦書きでは横幅)がないと(そういうことは頻繁に起り得ます)、写真はその後ろの文字ごと次ページに送られ、そのページには大きな空行ができることになります。これは、Kindleをはじめ、Kinoppyでもアップデート前のReaderでも同じでした。たとえば、こんな具合。

k-lk-r

 これはKindle Paperwhiteのキャプチャーですが、写真を「どこにでもあるはずはなかった。/翌日もなかなか船が」の段落間に「float:right」で配置していて、ご覧のように横幅が足りないため、その後の文章ごとそっくり次のページに送られて、ぽっかり空白ができてしまっています。ところが、その同じ個所をアップデート後のReaderで見ると、こんな具合。

r-lr-r

 ここでも、写真の指定位置には十分な横幅が残されていないのですが、なぜか指定の位置に写真は入らず、そのまま文章だけでページを埋めて、写真は次ページに送られています。だから、Kindleのように空白行はできていません。これは素晴らしい!

 以前に、この画像回り込み問題に関して「このようなことが起こるのは、文章の特定の位置にしか挿図の指定が行えないからですが、それをもっと幅をもたせて一群の文章のどこか適当な位置に置くといった指定ができて、それをリーダー側が空白が出ないように塩梅できるようになれば、もうちょっと改善されるのではないかと思いますが、果たしてそんなことが可能なのかどうか。」などと書いたことがあるのですが、今回のアップデートでReaderはこの「塩梅」を実現してしまったのではないでしょうか。ともあれ、これは素晴らしい進化で、他のリーダーもぜひ追随してほしいもんだと思います。加えて、Kindleに特化する前提で施した横書きのキャップションもみごとに表示されています。これもアップデート前は縦書きになっていました。

 まるでこのサイトの小うるさい注文に反応したように、多くの問題を解消してくれたソニーReaderの今回のアップデート。世界的な撤退で苦境に立つソニーの電子書籍事業ですが、日本ではこれを機に、特にオープンでスタンダードな読書システムの供給者として、何とか巻き返してもらいたいものだと思います。

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ソニーReaderがメジャーアップデート

 久々に機器情報を。

 6月25日にソニーReader PRS-T3SとPRS-T2のファームウェアのアップデートが公開されました。新しいバージョンは1.1.00.18170です。手持ちのPRS-T2にはこれまで何度かアップデートがありましたが、数々の問題点はずっと手つかず。今回も期待せずに適用してみたのですが、意外や意外、大きな変化がみられました。また、AndroidのReaderアプリでも、同内容のアップデートが行われたようです。どう変わったのか、気がついた点を報告します。

1.深刻な読み込み遅延が解消
 Readerの問題点の一つに、1段落が特別に長い文章があった時、読み込みが極端に遅くなるという現象があることを、これまで折に触れて指摘してきたのですが、アップデート後、その現象を引き起こす自作本『鏡花短編選 世話編』を読んでみると、これまで引っかかっていた「假宅話」の問題箇所がほぼスムーズに読めます。また同じ『深山編』で「銀短冊」に指示のない空白行ができる現象も解消されています。ReaderのEPUB3対応以来、2年越しの個人的?懸案の一つがこれでめでたく解決しました。ただ、このためでしょうか、最初に本を開くと、読み込み中の表示がノンブルの所に出て、更新前よりかなり待たされる感じです。その間、普通のページ送りは問題なくできるようですが、目次からのジャンプなどはできなくなります。メカニズムはよく分かりませんが、本を最初に一気に読んでいるということでしょうか。また、これによりReaderの動作全体も速くなったかというと、そうでもないようで、ページを行きつ戻りつすると頻繁に「お待ちください」が出ます。タブレットの動作がどんどん加速している昨今、専用読書端末のスローモーさがますます際立って感じられます。

2.行頭鍵括弧が全角取りに
 以前、「ソニーReaderの行頭半角括弧に泣く」という一文に書いた通りの迷惑な仕様が、今回のアップデートでようやく改められたようです。これで会話の多い小説の文章も違和感なく表示できます。文字組み関係では他にも変化が。これまで3字以上のルビで親字の上下の字間が広がってしまい、総ルビの鏡花では時に文字面に隙間がめだったのですが、アップデート後は3字ルビでも親字は通常の字間を維持しているようです。ただし、古い繰り返し文字の「くの字点」の行末行頭への泣き別れや句読点の行頭禁則違反といった現象は、新しいファームにも持ち越しているようです。なお、フォントは筑紫明朝で変わりませんが、これまでやや細長かった縦横比が正体に調整されたように見えます。また太字の指定も効くようになりましたね。

3.NCXナビの廃止
 Readerはこれまで、EPUBのシステム目次を、EPUB2のNCXファイルからしか読んでくれなかったのですが、今回からEPUB3規格にのっとりXHTMLのナビ文章だけを読むようになったようです。これでReader・kobo・Kinoppy・Kindleという主要リーダーのナビ文書がEPUB3規格で揃ったわけで、もうNCXとXHTML、二つのナビゲーション文書を用意する手間をかける必要はなくなりました。といいたい所ですが、今回のアップデートはReader PRS-T3SとPRS-T2が対象で、PRS-T1以前の端末はそのまま。それらのことを考慮すると、まだNCXは用意しておいた方がいいのかもしれません。逆に、自作の『鏡花短編選』はNCXしか用意していないため、アップデート後のReaderではシステム目次は表示されず、新たにXHTMLナビ文書を作らなければならないということになってしまいました(これから作るつもり)。同じく、上の1と2の改良についても、PRS-T1以前のReaderには及ばないため、それら機器では上記の問題は残ったままです。

4.ノンブルがようやくまともに
 これまでReaderのノンブル表示はなぜか「15-16」といった曖昧なものだったのですが、アップデートでようやくまともになりました。しかし、こんなのはバグに近いもので、本来発売前に正しておくべきものでは? いやはや、といいたくなりますが、まあ素直に喜びましょうか。

(追記)7月2日に2世代前のPRS-T1とPRS-G1にも同内容のアップデートが来ましたね。残るは初代のPRS-650・350ですが、さすがにこれは望み薄かもしれません。

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Kindle Paperwhite 感想

 いよいよ身の周りが白や黒の板だらけになってきましたが、これだけはやはり抑えておかなくちゃということで、発売日に届いたKindle Paperwhite を EPUB本自作派の視点から取り急ぎチェックしてみました。

●紙面の様子
 基本的に文字組みは先日報告したアンドロイド用のKindleアプリと同じ。フォントは少々癖のあるタイプバンク明朝。個々のグリフの姿だけでなく文字の並びの整いもいま一つ。行頭の起し鍵括弧は半角取りで、句読点と連続する場合は1.5角取りになるようです。行末・行頭禁則に破綻は見られず、下の余白が小さい画面設定でも句読点のぶら下がりを行なっています。ルビは3文字以上で親字の前後を空ける設定で、前後の文字にまでルビをかける文字かけはしないようです。

●自作ファイルの読み込み
 内蔵のウェブブラウザからDropboxなどのオンラインストレージに置いた自作mobiファイルを選択するとダウンロードが始まり、パーソナルドキュメントとしてホームに登録され読むことができます。ただしこの方法でやるとクラウド上のKindleライブラリには自作mobiファイルはアップロードされないようです。クラウドにアップして登録した複数の端末に配信したい場合は、例のメールに添付して端末に付与されたアドレスに送信するという方法を採る必要がありそう。ただし、そうしてダウンロードしたものはKindle PWではなぜかカバー画像が表示されません。パーソナルドキュメントや配信端末については、アマゾンのアカウントサービスのなかにあるMy Kindleから設定することができます。

●EPUB→mobi変換
 これも先に報告したように Kindle Previewer でワンクリックで行なえますが、アンドロイド版Kindleアプリではアプリにシステム目次がないためパッケージ文書の guide要素に文中目次の指定を加えておく必要がありました。けど、Kindle PWではEPUB2のナビゲーション文書であるncxを読んでいるようで、そのままでシステム目次が表示されますね。ただし、アプリのことを考えると、guide要素への指定追加は必須かと。

●全体
 ソニーReaderやKobo touchのような大きな難点が見当たらず(今のところ)、ソツなく仕上がった総合力の高い端末だと思います。外装のデザインや手触りもよく吟味されていますし、内蔵ライトも、意外に青かったのとムラがあるのが気になりますが、もちろん便利この上なし。これからはライト無しの読書端末は選択しにくくなりますね。といっても、Kobo Gloを買うことはなさそうですが。欠点があるとすれば、独自フォーマットだということとフォントぐらいでしょうか(バッテリーの持ちはこれから)。前者については、まあそれがアマゾンというぶっちぎり企業の特権だということで、受け入れつつ自由なEPUB出版との共存をはかるしかなさそう。後者についても、水の如くニュートラルでコンテンツの邪魔をしないフォントをと、アマゾンさんにお願いするしかなさそうです。
追記:オリジナル電子本にmobi版を追加しました。

スリープ画像も気が利いてる

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あれっ! ソニーReaderがIVSに対応してるぞ

 先週、マイクロソフトがofficeでのIVSへの対応を発表しましたね。そんなこともあって、今日なにげなく、以前作ったお試しIVSのEPUB本「親子そば三人客」をNexus7のソニーReaderアプリで開いてみると、あれっ、なぜか異体字が表示されています。

 我が目を疑うとはこのこと。最近視野がますます模糊としてきた目をしばたたきつつ擦りつつ、何度も確認してみますが、間違いありません。
「しかしアプリの能書きには一切そんな記述はなかったぞ」
「いや、融通の利くアンドロイドアプリなら、こっそり先行してやってるってことはあるかもしれん」
 などと理屈にもならないことをつぶやきつつ、ウェブサイトのアップデート情報を確認してみてもどこにもIVSの文字はみつかりません。何が起こったのでしょう。

 まずは事態をより明確にするために、異体字の混ざり込んだ小説なんかではなく、IVS文字の羅列ページを別に作ってそれを読ませてみます。「親子そば三人客」のIVS化の時に作ってあった異体字の一覧を使って、基本字とそれに異体字セレクターを付したものをずらり並べてみました。それをNexus7のReaderアプリと二つのソニー端末PRS-T1・PRS-T2に読ませてみると…。

 なんと、アンドロイドアプリとともに読書端末のPRS-T2でも異体字セレクターが効いていることが判明。いやーめでたい、本邦初の電子ペーパー端末によるIVS対応です。これまでIVSに対応していたのは iOSアプリのKinoppy と bREADERだけでしたから。一方、旧型のPRS-T1では異体字セレクターは効いていません。最新版にファームアップしていますが、確認してみるとPRS-T2とはファームウェアのバージョンが違います。最新のPRS-T2とアンドロイドのReaderアプリだけがIVSに対応したようですが、これは個人的基準では大ニュース。雨の日曜ということもあって、急遽報告の作成に至った次第です。

 それにしてもソニーさん、こんな大きな前進をなぜ伏せているのでしょう。非対応端末の利用者の不興を買うのが心配だから? あるいは制作側の混乱を恐れたため? まあ確かに異体字が表示できる端末とできない端末が混在しているなかで、どちらの字で読まれるか分からないというような本作りはしづらいでしょうから、こんな一部機種でのIVS対応というような事態はプロの制作者にとって無くもがなのことかもしれません。しかし、ある種のコンテンツ(たとえば鏡花本。本来の文字が容易にほぼ完全に再現できる)にとってはこれは大きな僥倖であるわけで、それどころか文化的な前進でもあるわけで、そこをアピールしてもよかったのではないかと思います。

 ivs_test.epub

追記:今頃になってこんなことに気づいたというのも情けない話ですが、ソニーReaderのIVS表示はまだ完全ではないようですね。拙作の「親子そば三人客」IVS版を表示させると、ページ間で何文字かが脱落してしまうという現象が見られます。アンドロイド版のReaderアプリでも専用端末のPRS-T2でも起ります。同じくIVS対応のアンドロイドおよびiOS版Kinoppyでは問題ありませんから、当方のEPUBファイルの手抜かりが原因ではなくReader側の問題でしょう。折しも本日新しいソニーReaderPRS-T3が発売になりましたが、このIVSも含めてこれまで報告してきた問題点が修正されたファームウェアになっているのかどうか…。(2013.9.24)

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新ソニーReader PRS-T2のEPUB3にがっかり

 以前書いたように、既存のソニーReader PRS-T1のEPUB3表示能力には、不完全なところがあります。特に、一段落が特別に長い文章を読ませた場合、ページ送りがフリーズといいたくなるほど遅延してしまうのは、稀なケースだとはいえ読書端末として致命的な欠陥だと思います。けれど、それも途中からのファームアップでEPUB3に対応したという制約があるためで、はなからEPUB3を意識して作られた新Readerにはゆめゆめそんなことはないはず。そんな確信をもって、ガジェットコレクターめいてきた机まわりに目をつむって注文した新Reader PRS-T2ですが、みごとに裏切られました。

 結論からいうと、PRS-T1のEPUB3における欠陥・難点はそっくりそのままPRS-T2に引き継がれています。というか、EPUBエンジン的には両者はイコールです。何の改良もリファインも加えられていないように見えます。だから、相変わらず『鏡花短編選世話編』の「假宅話」の半ば辺りでは、1ページめくるのに数分が費やされますし、『鏡花短編選深山編』の「銀短册」ではあるはずのない数行の空白行が出現します。また、相変わらず2文字取りの「くの字点」が行末行頭で泣き別れになります。そのほか、改行行頭の鍵括弧の天付き半角取りとか、リンク部分への強制的な網かけとか、扉画像を100%指定しても余白が出るとか、パッケージ文書でのカバー画像や目次ファイルの指定が無視されるとか、大小の問題はそっくり次号機まで持ち越されてしまいました。

 こういう新しい分野に切り込んだツールで、二の矢が一の矢に何も加えないというのは、ちょっと信じられないことです。もちろん、ハード的にはPRS-T2はより軽くなり、動作もよりスムーズでページ送りの暗転も最小限に押さえられ、確実に進歩しています。それだけにソフト的な停滞が実に残念というほかありません。今後ファームアップでの大幅なリファインを期待したいところです。楽天koboにも少なからぬ難点がありますし、ハードソフトともに満足できるEPUB日本語リーダーはまだ存在しません。こんなことをしているうちに、Kindle paperwhite日本版がそつなく登場して、動き始めた自主出版さえもAmazon mobiの市場に吸収されて、みんなAmazonの掌の上で踊るだけということになってしまうかもしれません。

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追加情報3つ

楽天koboで栞(読書位置)を残す方法
 前回の投稿の最後に追記したように、楽天koboで自作EPUBを拡張子を.kepub.epubにして読むと、表示自体は満足できるものになるのですが、読書位置が残らないという痛すぎる現象が起こります。その回避策として、各センテンスごとに< span id=”kobo.1.1″ >~< /span >という具合に< span >タグで括って一定の番号を振っておくという方法がネットで紹介されています。これで検索も働くようです。同様に< p >タグに番号を振っても栞は残るようですが、検索は効かないよう。どっちにしても自動化の手段がないととんでもなく手間がかかりますし、ファイルも重くなってしまいますので、あまり現実的な対策とはいえないように思います。

KinoppyがIVSに対応。文中リンクも
 iOS読書アプリのKinoppyが1.2.2にバージョンアップして、bREADERに続いてIVSに対応しました。他にサロゲートペア、EPUB固定レイアウト、そして待たれた文中リンクにも対応と、一気のステップアップです。ただ、そのせいかずいぶん重くなってしまったようで、iPod touchでは鏡花本が頻繁に落ちます。もはやiPhoneかiPadでしか満足に動かないようですね。ソニーReaderは異体字セレクターをきれいに無視するし、サロゲートペアには対応しているようですので、部分的に文字化けする楽天koboのことを考えなければ、鏡花EPUBは全部IVS化してしまってもかまわないかもしれません。

「ハリー・ポッター」は参考になります
 情報としては古くなりましたが、7月末に発売された「ハリー・ポッター」の電子書籍シリーズ。電子透かしを利用した事実上のDRMフリーに引かれて一冊購入して、さっそく腑分けして勉強させてもらっています。面白いのはナビゲーション文書が3種類もあること。目次はncxで表示したり、リスト形式の目次が表示できないリーダーがあったり、バラバラな仕様に対応しようとするとこういうことになってしまうようです。あと、扉画像を< svg >タグで括ることで安定して扉表示ができるようで、その辺りの仕組みは私にはチンプンカンプンなのですが、とりあえず猿真似させてもらおうと思っています。他にも参考になるテクニックがいろいろ蔵されていそうです。
 その「ハリー・ポッター」、何の気なく読み始めてみましたが、なるほどこれは面白いですね。英国ファンタジー文学の伝統を受け継いだ、文章も構想も読み応えのある大作で、日本の宮崎駿などのアニメ・ファンタジーとはまったくの別物、あくまでこうして読んでこその作品という気がします。そういう意味で大冊の物理的・経済的負担を軽減した今回の電子化は、電子書籍の利点を印象づけるいい企画だったのじゃないでしょうか。直売サイトのポッターモアから最初はソニーReaderにダウンロードしたのですが、すぐにkoboへの同期が可能になったので、フォントと文字組みの勝るkoboでもっぱら読んでいます。もうすぐ出るらしい新Reader PRS-T2の文字の姿はどうなるでしょうか。

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楽天koboで自作EPUBを読む&感想

 発売日の遅くに、予約していた楽天 kobo touchが届き、さっそく自作EPUBでもって表示具合を確かめてみました。

 購入者がかなり多かったようで、サーバーが混雑してセットアップに苦労しましたが何とか始動。ネットではこのセットアップの混乱とマニュアルがないことでブーイングの嵐ですが、まあ、それは機械自体の評価というよりも、その周辺の現象ですから、楽天さんのスタートアップ体制の甘さへの批判は当然としても、もう少し冷静に機能を見極める必要があるのではないかと思います。

 で、私の場合は自慢ではないですが、たまたま半年前に海外版を手に入れていましたので、マニュアルがなくても何とかなります。メニュー類の構成はほぼ海外版と同じなので、まるで隠されたようにメニューの奥深くにある「ブラウザを起動」ボタンにたどり着き、そこから書籍ファイルを置いているDropboxにアクセスします(もちろんその前にwifi設定が必要)。手順はこう。
ホーム画面左上の歯車アイコン → 設定ボタン → その他 → ブラウザを起動

 ブラウザを起動したら(ブラウザは万事動作がのろいことを覚悟しておいて下さい)、Googleの検索画面が表示されますので、Dropboxを検索。ログイン画面からDropbox に入ります。入ったDropboxはモバイル用のもので、そのままではファイルのダウンロードができませんので、画面最下部左下の「Dropboxバージョン」という文字をタップしてパソコン用画面へ移動します。そして、目的のフォルダへ入り、ファイルをタップすれば上にダウンロードのボタンが現れますので、タップしてダウンロード。すると目的の書籍ファイルがホーム画面に現れるはずです。ブラウザはタップに対する反応も鈍く、何度もタップする必要がありますが、しつこくやっていれば何とかダウンロードまでたどり着けるはずです。

 まあ最初は、パソコンとUSBで接続して、エクスプローラーで kobo を開き、書籍ファイルをコピーする方が簡単なのですが、制作途中で何度も確認したい場合などはそれも手間。Dropboxのフォルダをお気に入りかホーム画面に設定しておけば、以後はブラウザを開けばすぐに書籍フォルダを表示することができます。

 さて、こうして自作EPUBを koboに登録してさっそく読んでみます。ところがあまり芳しくありません。フォントのリュウミン(KL-R Pr6)はなかなかきれいですが、句読点が変に開いているし、ページ毎に表示される行数が違ってページの左側に大きな空きができたりしています。それにページ送りが横書きのように左開きのままです。そして、ソニーReaderではフリーズしてしまう例の「世話編」の問題個所で同じように固まります。これでは使えません。

 大いに落胆して人様の使用記を探っていると、こんな記述に出くわしました。
「ファイル名を ~.epub から ~.kepub.epub に変更するだけで、問題は全部解決してしまう」
 確かにパソコンから見た kobo内のデフォルトの書籍ファイルには、.kepub.epubという変な拡張子がついていて何だろうと思ったのですが、この.kepubでEPUB3ファイルを区別していたようです。これまでEPUB2リーダーとして世界的な実績を持つ koboだけに、その機能を犠牲にせずにEPUB3に対応するためには、エンジンを別にするしかなかった、その区別をファイル名ですることにした、ということでしょうか。

 それはともかく、さっそく .kepubをファイル名に加えて読み直します。今度は大丈夫です。ページ送りの具合も紙面の様子も先行のリーダーに何の遜色もありません。「世話編」のフリーズも解消しました。それどころか、よく見ると文字組みがかなりしっかりしているようです。ずっと見ていっても、ソニーReaderや Kinoppy、bREADERDで必ず幾つか発生していた行頭行末禁則の破綻がまったく見つかりません。くの字点の泣き別れもありません。それでいて行端はよく揃っています。そして、ルビの扱いもソニーReaderと同じ中付きですが、3文字のルビでも文字かけ処理をして親字の字間はベタ送りを維持しています。4字ルビで少し字間が広がりますが、ソニーReaderのように3字以上は字間を開いてしまい、文字の流れが間延びするという感じはありません。上出来です。
(→ルビに関する追記 正確には、「文字かけ処理は他の漢字にはかけない」という原則をきっちり守っているようで、漢字に隣る場合は3字ルビでも漢字側にはやや字間が開きます。けど、ひらがなにはしっかり文字かけして、4字ルビでも字間の開きは最小限に押さえています。電書でここまでできたら御の字では?)

 ついに我々はEPUB3を確実に受けとめてくれる専用端末を手に入れました。って、ソニーReaderがEPUB3に対応した時にも同じようなことを書いたような気がするのですが、その後いろいろと綻びが見えてきてReaderには味噌がついてしまいました。その点 koboは大丈夫でしょう。ソニーReaderやKinoppyに数々の難題をふっかけて困らせてきた鏡花EPUBがこれだけ端正に表示されているのですから。ただし、幾つかさらに高望みをしたい点が見つからなくはありません。

 まずこれは最大の高望みでしょうが、IVSへの対応です。bREADERがまさかのIVS対応で異体字の表示を実現してくれた今は、必ずしも無理な願いではないような気がしてきました。現状、koboで異体字セレクター付きのEPUBを読むと、Kinoppyのようにすべて文字化けするというわけではないものの、熟語の場合、一方の文字が消えてしまうという現象がいくつか見られます。ソニーReaderのように完全無視して基本字を表示するというなら、異体字セレクター付きEPUBとの共存は可能ですが、上のような現象があるとそれも難しくなります。また koboはサロゲートペアのユニコード文字にも対応していないようです。これも空白になってしまいます。ソニーReaderは対応しています。さらに外字を画像で表示した場合、画像はかなり右寄りに表示されてしまいます。ルビも右に寄って親字と重ならないのが救いですが、これは早めに修正してもらえたらと思います。これもソニーReaderは問題ありません。

 つまり外字・異体字関係の使い勝手はソニーReaderの方が少し上。けど、文字組みと表示の安定性では koboが遥かに勝っています。パソコンからフォントファイルをコピーすることで、多様なフォントを使用することもできます(ただし海外版にある行送りと余白、行揃えの設定機能は、日本版では無効にされているようです)。ようやく信頼できるEPUB3端末を得て、これからは koboを基準にEPUB作りを進めてみたいと考えています。次に来るソニーReaderの新型とKindle日本版にとっても koboのハードルはけっこう高いのではないでしょうか。

→追記 EPUB自主出版の受け皿としてkoboを考える場合、大きな問題があることがわかってきました。本来汎用をめざすEPUBのファイル名にkobo用の「.kepub」をつけなければならないという矛盾は、kobo用ファイルを別に用意することで一応回避できるとしても、なんとこの本にはkobo上ではどこまで読んだかが残らない、という電子本としてほとんど致命的な欠陥が生じてしまうようです。楽天のブックストアからダウンロードした本でない場合、読書記録やメモも残らないというのが、今のところのkobo上での個人制作本の扱いのようです。具体的には読んでいるxhtmlファイルの先頭に毎回戻ってしまいますので、まあ短編集などの場合は何とか耐えられるとしても、長編では悲惨でしょう。毎回記憶を頼りに読んだ個所をただでさえ快適とはいい難いページナビゲーションの中で探さなくちゃならないのですから。この点が解決されない限り「文字組みがきれいですから、ぜひkoboで読んでください」とはいいにくくなってしまいましたね。

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