「風流線」「續風流線」詳細

長編ロマン作家としての鏡花を再発見する

[風流線]
[續風流線]

――鏡花の長篇小説では何を選ぶかといふことになれば、…私が一番愛着の深い作品は、一は勿論「風流線」で、二は「由緣の女」である。…私は舊制の高等學校時代に初めて鏡花を讀み、忽ち熱中し、特にこの「風流線」で寢食を忘れた覺えがあつて、そのあと少くとも二度は讀み返したがその度に卷を措く能はざるものがあつた。…私はかねがね、このやうな滋味豐かで興味津々たる作品をややもすれば批評家が二の次にするのは宜しくないと思ってゐる。鏡花の愛讀者でも「風流線」には保留をつけるやうで、さういふ人はきつとこれを大衆文學だと思ふのだらう。筋が出たら目だとか、人物が類型的だとか、分つたやうなことを言つてけなすやうだが、しかし鏡花の筆が、その記述が、暗闇の中から鮮かに浮び上らせた映像を讀者がじつと見守つてゐれば、筋は鏡花世界に必然のものとして運ばれ、人物は鏡花世界に生きてゐることのしるしを帶びて動くのである。これほどの喚起力を持つ文學を通俗的と貶めるのは、評者が文學の本質を理解してゐないせゐではないかと少々疑ふ。――

(福永武彦「『山海評判記』再讀」)

 「風流線」「續風流線」は、泉鏡花が数え年31歳の明治36年から翌年にかけて「国民新聞」に連載した長編小説です。両編は正続に分かれているものの、合わせて一編と見なすべき内容であり、従って本作は鏡花最大の長編小説ということができるだけでなく、上の福永武彦の評価のように、最上の長編小説と呼ぶこともできる雄編として鏡花文学の一角を占めています。物語の舞台は北陸線の延伸にともなって、加賀百万石以来の因循な気風がかき乱され始めた金沢近郊。架橋工事が進む手取川の河原で、破滅的な思想を抱く哲学青年とアナーキーな工夫集団が出会うことで、地域の慈善家、実は体よく貧窮者を搾取する偽善的な権威者との間で抗争が始まります。かつての「観念小説」を思わせる人物と、社会批判的な視点を強く感じさせる設定、『水滸伝』を思わせる伝奇的な筋立ては、一般的な鏡花のイメージを逸脱して読者を驚かせるだけでなく、場面場面の精彩と波瀾に富んだ展開で読者を引きつけ、このような長編ロマンの作者としても鏡花には十分な筆力と構想力があったことを強く印象づけます。
 本書は、この鏡花の代表的長編小説初の電子書籍として、初刊本を底本として採用し、加えて新聞初出やその後の刊本も参照しつつ、既存の紙出版に見られる疑問点や誤りの校訂に努めています。本書によってより豊かな「鏡花世界」を発見していただければ幸いです。

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