「鏡花短編選」詳細

 岩波の鏡花全集を底本に、鏡花の文体・表現と分かち難い関係にある旧字・旧仮名・総ルビをできる限り守って、電子化を行いました。加えてPDF版では、鏡花生前の単行本の活字に近い、復古体の仮名フォントを使用して、原鏡花本の紙面の再現をめざしました。


「鏡花短編選 世話編」

 一般に、怪異譚・幻想譚の書き手としてイメージされることの多い泉鏡花ですが、実際にはそうした特異な題材に依拠しない作品も多く残しています。確かに怪異譚・幻想譚の妖艶・華麗な世界が読者に与えるインパクトは絶大ですが、それのみに囚われていては鏡花の本領を見損なうのではないかと言いたくなるほど、それ以外の、いわばより日常性に立脚した作品が私たちに与えるさまざまな感興には、忘れがたいものがあります。だから、私などはたとえば「眉かくしの霊」の後半の美しい怪異に魅せられながらも、その冒頭の膝栗毛に心よせた楽しげな旅語りや、奈良井の宿の懐かしくゆかしい描写にも、強くひかれるものを感じます。耽美的な幻想の世界と、江戸の流れを汲む話芸と人情の物語と、そのどちらも泉鏡花なのです。なんと豊かな詩嚢を備えた作家を私たちは持ったことでしょう。
 そんな次第で三つの鏡花短編選では、個人的に愛着措く能わざるところの、幻想作家ならざる泉鏡花の魅力を伝える作品を選んで、電子本に仕立ててみました。短編選としたのは、その方が気分的に入力が楽だったということもありますが、鏡花の水際立った語りや細やかな自然・風土への目線が、より端的に楽しめるのは短編だと考えたためでもあります。
 「世話編」には東京を舞台にした短編から、洒落本や歌舞伎の粋と、人情噺や落語の語りの洗練をみごとに小説に生かした好編、「暗まぎれ」「うしろ髪」「親子そば三人客」「侠言」「逢ふ夜」に加え、晩年の「縷紅新草」につながる墓参話の「二人連」、そして大震災の余燼さめやらぬ弦歌の地を描いて、江戸から連綿と続いていた一つの文化の終りを感じさせる「假宅話」を収めました。

■適合読書環境

PDF版 PDFが表示できる全端末。表示は5インチ画面に最適化。

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「鏡花短編選 北国編」

 「北国編」には郷里・金沢とその周辺を舞台にした短編、「海の鳴る時」「波がしら」「國貞えがく」「月夜車」「霰ふる」「伊達羽子板」「瓜の涙」「鷭狩」を収めました。
 幼くして母を亡くし、若くして錺職人だった父を亡くし、翳りの多い時間を過ごした金沢は、鏡花にとって懐かしいだけではない、愛憎相半ばする土地だったようです。また、多感な少年・青年時代に触れあった女性たちのイメージは、母も含めて、後年ますます純化されて、郷里への愛憎と絡まりあうことになります。こうして金沢を舞台にした鏡花の小説には、自身の経験からくる世間への複雑な思いと、ゆかりの女性たちへの憧憬が、陰に陽に強いモチーフとして流れ、独特の陰影が宿っています。それは軽妙で洗練された「世話編」の各編から感じられる都会人的・文章職人的鏡花像とは対照的に、地方の風土を抜き難く内に抱え込みながら、それを強力なデフォルメで作品に造形した近代作家としての鏡花像を示しているように思います。

■ 動作確認端末

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 PDF版ダウンロード(2012.6.18更新)

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「鏡花短編選 深山編」

 「深山編」には「山中哲學」「さら/\越」「銀短冊」「貴婦人」「雪靈記事」「雪靈續記」の6編を収録しました。いずれも北陸の山深い土地を舞台にした好編で、なかでも鏡花自身が金沢から東京へ出る際に体験した、福井から敦賀・近江への苦しい峠越えを下敷きにした諸編には、臨場感にあふれた自然描写が見られます。鉄道や道路が四通八達した現在と違い、当時の、特に明治29年の北陸線開通以前の北陸は、深い山と海に囲まれた僻遠の地でした。若い頃、苦労してそれを越えて都へ出、また帰郷した鏡花にとって、郷土は東京とはまったく別の世界としてイメージされたに違いありません。後年の北陸を取り巻く険阻を舞台にしたこれらの小説には、そうした厳しい地勢・風土への畏怖と愛着が感じられます。さらに北陸世界のイメージは、大胆に展開されて幾つかの長編小説になります。「北国編」の郷土の人々、「深山編」のそれを囲む山々は、鏡花の物語が生まれる源泉を教えてくれます。

■ 動作確認端末

PDF版 PDFが表示できる全端末。表示は5インチ画面に最適化。

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1 Comment »

  1. 晩霞舎 said,
    8月 1, 2016 @ 11:28 PM

    更新メモ(2017.10.4)
    いつのまにか切れていた無料版のダウンロードリンクを復活させました。m(._.)m
    mobi版を削除しました。

    更新メモ(2014.7.8)
    ソニーReaderのアップデートに対応するため、システム目次を更新しました。

    更新メモ(2013.11.10)
    「深山編」の一部誤字を訂正しました

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