『航薇日記』追懐行1〈備中妹尾戸川陣屋跡を訪ねる〉

「松のなみ木を半里許過て、妹尾の塁にいたる。ここに成斎が父貫好、その室永氏居れり。永氏はわが亡妻の姉なり。」(『航薇日記』十月二十四日)

「朝とく起き出て、成斎とともに後園の山に登る。ここに稲荷の祠あり。祠辺松楓多し。遠く田園を望み、風景もよく、はた要害あしからぬ塁壁なり。」(同二十五日)

「此日朝より小斎に閑話して楽む。小斎の前に竹あり。…これを問ふに、こは魏竹なり。西国にも稀なるよし。近ごろ之を獲て愛玩すと、永氏の語られし。僑居中、山水詩酒の外一事無きは、実に楽境といふべきにや。」(同二十八日)

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